電動リールを快適に使い続けるために欠かせないのが、適切なタイミングでのスプール交換です。しかし、「どのタイミングで交換すべきか分からない」「手順が複雑そうで不安」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、電動リール歴15年のベテランアングラーが、スプール交換の正しい手順から注意すべきポイントまで、初心者の方でも安心して作業できるよう詳しく解説します。
この記事を読めば、電動リールのスプール交換で失敗することはありません。
1.電動リールのスプール交換が必要になる理由

PEラインの巻き替えタイミング
PEラインは使用回数を重ねるごとに劣化が進み、強度が低下していきます。特に船釣りでは根掛かりや大型魚とのやり取りでラインにダメージが蓄積されるため、定期的な巻き替えが不可欠です。
PEライン交換の目安
- 使用回数:10~15回程度
- 色落ちや毛羽立ちが目立つ場合
- 結束部分の強度が不安な場合
一般的に、PEラインは3~6ヶ月での交換が推奨されています。頻繁に釣行される方は、より短いスパンでの交換を心がけましょう。
釣種に合わせたライン交換
電動リールの大きな魅力は、一台で様々な釣種に対応できることです。しかし、釣種によって最適なPEラインの太さや長さが異なるため、スプール交換による使い分けが重要になります。
釣種別推奨ライン
- タイラバ・イサキ釣り:PE1~2号 200~300m
- タチウオ・アジ釣り:PE1~1.5号 200~250m
- ヒラメ・マダイ釣り:PE2~3号 200~300m
- 深海釣り・根魚:PE3~5号 300~500m
このように釣種ごとに最適なセッティングにするため、替えスプールを用意してライン交換を行うアングラーが増えています。
スプールの劣化・損傷時
長期間の使用により、スプール自体に傷や変形が生じることがあります。特に以下のような状況では、スプールの交換を検討する必要があります。
スプール交換が必要なケース
- スプールエッジに深い傷がある
- ラインローラー部分の摩耗が激しい
- スプール全体の変形や歪み
- 巻き心の破損
これらの問題を放置すると、PEラインの損傷や飛距離の低下につながるため、早めの対処が肝心です。
ライン容量の変更が必要な場合
釣り場の水深や釣法の変更により、巻くべきPEラインの長さを変える必要が生じることがあります。例えば、浅場メインの釣りから深場狙いに変更する場合、ライン容量の多いスプールへの交換が効果的です。
容量変更の具体例
- 近海から遠征釣行への変更
- ライトタックルからヘビータックルへの変更
- 船釣りから岸釣りへの使用変更
メンテナンス時の清掃
電動リールの定期メンテナンスを行う際、スプールを外すことで普段掃除できない箇所まで丁寧に清掃できます。特に海水を使用する船釣りでは、塩分の除去が電動リールの寿命を大きく左右します。
メンテナンス時のスプール取り外しにより、以下の箇所を清掃できます。
- スプール軸周辺の塩分除去
- ベアリング部分の洗浄
- 内部機構の点検
2.スプール交換前の準備と必要な道具

電源を必ず切る安全確認
スプール交換前の最重要事項は、電動リールの電源を完全に切ることです。 電源が入ったままの状態で作業を行うと、突然スプールが回転し始める危険性があり、怪我や機械の故障につながります。
安全確認のチェックポイント
- バッテリーから電源コードを完全に取り外す
- 電動リールの液晶画面が消灯していることを確認
- テクニカルレバーが完全にOFF位置にあることを確認
- ドラグを十分に緩める
特にシマノの電動リールでは、スーパーフリースプール機能搭載機種において、モーターON状態でのクラッチ操作は故障の原因となるため注意が必要です。
作業に必要な道具一覧
スプール交換をスムーズに行うために、以下の道具を事前に準備しておきましょう。
基本的な道具
- 新しいPEライン(必要な太さ・長さ)
- はさみ(PEライン専用カッター推奨)
- マーカーペン(ライン結束部のマーキング用)
- タオル(手拭き・機材拭き用)
- 綿棒(細部の清掃用)
メンテナンス用品
- コネクターグリス(ダイワSLPW、シマノ純正等)
- 中性洗剤
- 真水(塩分除去用)
- 歯ブラシ(細部の清掃用)
便利な道具
- ラインマーカー(10m間隔の目印用)
- 下巻きライン(PE使用量を調整する場合)
- スプールケース(交換したスプールの保管用)
作業環境の整備
スプール交換は精密な作業のため、適切な環境で行うことが成功の鍵となります。
理想的な作業環境
- 明るく風の当たらない屋内
- 作業台の高さが適切(腰の高さ程度)
- 十分なスペースの確保
- 滑り止めマット等の敷設
避けるべき環境
- 直射日光の当たる場所
- 風の強い屋外
- 狭い場所での作業
- 不安定な場所での作業
特に船上での作業は避け、帰港後に陸上で行うことを強く推奨します。
新しいPEラインの準備
スプール交換と同時にPEラインも新しくする場合は、事前に適切な製品を選定しておきましょう。
PEライン選びのポイント
- 釣種に適した太さの選択
- 信頼できるメーカーの製品
- 必要な長さの確保(+予備分)
- 4本編みまたは8本編みの選択
人気のPEラインブランド
- よつあみ「G-soul」シリーズ
- デュエル「ARMORED F+」シリーズ
- サンライン「PE-EGI」シリーズ
- ダイワ「UVF PEライン」シリーズ
スプール交換時の注意点
作業開始前に、以下の注意点を必ず確認してください。
安全面の注意
- 電源の完全切断
- 周囲に人がいないことの確認
- 工具の準備と点検
- 応急処置用品の準備
機能面の注意
- 機種別の取扱説明書の確認
- 交換部品の互換性確認
- 作業手順の事前確認
- カウンター設定のメモ
これらの準備を怠ると、作業中のトラブルや機械の故障につながる可能性があります。
3.電動リールスプール交換の手順【完全ガイド】

ドラグの調整と電源の切断
スプール交換作業の第一歩は、安全確保のための基本設定です。
手順1:ドラグの調整
- ドラグノブを反時計回りに回し、完全に緩める
- 手でスプールを回して、スムーズに回転することを確認
- ドラグが効いていないことを必ず確認
手順2:電源の完全切断
- 電動リールからバッテリーコードを取り外す
- 液晶画面の消灯を確認
- テクニカルレバーがOFF位置にあることを確認
- 念のため10分程度放置し、内部電荷の放電を待つ
この段階で電源が完全に切れていることを確認しないと、後の作業で思わぬ事故につながる危険性があります。
古いPEラインの除去方法
既存のPEラインを安全かつ効率的に除去します。
手順1:ラインの切断準備
- スプールに残っているPEラインの量を確認
- ライン先端を見つけ、30cm程度の長さを残して切断
- 切断面をライターで軽く炙り、ほつれを防止
手順2:ライン除去の実行
- 手動でハンドルを回し、ゆっくりとラインを除去
- ラインが絡まないよう、一定の速度を保つ
- 最後の数メートルは特に慎重に作業
- スプールピンの結び目まで到達したら作業を一時停止
手順3:スプールピンからの結び目除去
- 結び目を慎重に解く(無理に引っ張らない)
- 解けない場合は、PEライン専用カッターで切断
- スプールピン周辺に残ったライン片を完全に除去
古いPEラインの除去時は、ラインの状態をよく観察し、劣化具合を把握することも重要です。
スプールの取り外し手順
電動リールからスプールを安全に取り外します。
シマノ製電動リールの場合
- ハンドル側からスプールを確認
- スプールを軽く手で押さえながら、反時計回りに回す
- スプールが浮き上がったら、慎重に引き抜く
- スプール軸やベアリング部分に異常がないか確認
ダイワ製電動リールの場合
- クラッチレバーをOFF位置に設定
- スプールを手で持ち上げるように取り外す
- マグシールド部分の確認
- 内部機構に異物がないかチェック
取り外し時の注意点
- スプールを落とさないよう両手で確実に保持
- 内部パーツを触らない
- 取り外したスプールは清潔な場所に保管
新しいスプールの取り付け
新しいスプール(または清掃済みスプール)を正しく取り付けます。
取り付け前の確認事項
- スプール軸の清掃状態確認
- ベアリングの動作確認
- 新しいスプールの傷や変形がないかチェック
- 適合性の最終確認
取り付け手順
- スプールを電動リール本体に慎重に挿入
- 軸が正しく嵌合していることを確認
- スプールを軽く回転させ、スムーズに動くことを確認
- 時計回りに回してスプールを固定(シマノの場合)
取り付け完了後の確認
- スプールのガタつきがないか
- 回転時の異音がないか
- レベルワインダーとの位置関係が正常か
PEラインの巻き方とコツ
新しいPEラインを正しく巻くことで、トラブルを防ぎ最大限の性能を発揮できます。
巻き始めの準備
- PEラインの先端処理(結び目の作成)
- スプールピンへの結束
- 結束部分の強度確認
効果的な結束方法
推奨結び:ユニノット またはパロマーノット
- 強度が高く信頼性がある
- 結び目が小さくレベルワインダーに影響しない
- 結束が比較的簡単
正しい巻き方のコツ
-
適度なテンションを保つ
- 弱すぎると巻き癖がつく
- 強すぎるとラインが傷む
- 一定の張りを保って巻く
-
等間隔での巻き上げ
- レベルワインダーの動きに合わせる
- 偏りなく均等に巻く
- 10m巻くごとに一度確認
-
下巻きの活用
- PE使用量を調整する場合
- ナイロンライン約50~100mを先に巻く
- PE接続部分はFGノット等で強固に結束
巻き量の調整
- スプール容量の80~90%程度が最適
- 満巻きは避ける(トラブルの原因)
- 釣種に応じた必要量を正確に計算
最終確認事項
- カウンターの学習機能設定(対応機種)
- ドラグ調整の復旧
- 全体的な動作確認
4.スプール交換後の動作確認とメンテナンス

カウンターのゼロセット方法
スプール交換後は、深度カウンターの正確性を保つために「ゼロセット」を行う必要があります。
シマノ製電動リール(フォースマスター・プレイズシリーズ)
- 電源を接続し、液晶画面を確認
- MEMOボタンとR/Sボタンを同時に3秒以上長押し
- 「0 SET」表示が出たら成功
- 仕掛けを海底まで下ろしてからゼロセット実行
ダイワ製電動リール(シーボーグ・レオブリッツシリーズ)
- 電源接続後、メニューボタンを長押し
- 設定メニューから「水深リセット」を選択
- 海底タッチ後にリセットボタンを押す
- 「000」表示になることを確認
ゼロセットの重要性
- 正確な水深表示
- 棚の把握精度向上
- 船べり停止機能の正常動作
- 安全な釣行のサポート
巻き上げテストの実施
実際の釣行前に、電動リールの巻き上げ性能を確認します。
テスト手順
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無負荷テスト
- 何も付けずに巻き上げ動作確認
- 異音や振動がないかチェック
- スムーズな動作を確認
-
軽負荷テスト
- 500g程度のオモリを使用
- 巻き上げ速度の確認
- モーターの発熱状況をチェック
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実用負荷テスト
- 実際の仕掛けと同程度の重量でテスト
- 連続使用時の安定性確認
- バッテリー消費量の把握
確認ポイント
- 巻き上げ力の十分性
- カウンター表示の正確性
- 各種機能の正常動作
- 異常音や発熱の有無
ドラグ調整の確認
スプール交換作業で緩めたドラグを、適切な設定に戻します。
基本的なドラグ調整
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初期設定
- 使用するPEラインの約1/3程度の強度に設定
- PE2号使用時:約6~8kg程度
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微調整の実施
- 実際の魚とのやり取りを想定
- 竿の曲がり具合を確認
- ラインブレイクとのバランス調整
ドラグテストの方法
- スプリングスケール等での数値確認
- 手で引っ張ってのフィーリング確認
- 段階的な負荷での動作確認
コネクター部の清掃とグリス補充
スプール交換と合わせて、電動リールの生命線であるコネクター部のメンテナンスを行います。
清掃手順
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分解前の確認
- 電源が完全に切れていることを再確認
- 必要な工具と清掃用品の準備
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コネクター部の清掃
- 綿棒で端子部分の汚れを除去
- 中性洗剤を薄めた水で清拭
- 完全に乾燥させる
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グリス補充
- 専用コネクターグリスを使用
- 薄く均等に塗布
- 余分なグリスは拭き取る
推奨グリス製品
- ダイワ:SLPW コネクターグリス501
- シマノ:純正コネクターグリス
- 汎用品:釣り具店推奨の電動リール用グリス
グリス補充の効果
- 電気接触の改善
- 防錆・防食効果
- 長期使用時の安定性向上
- 接触不良の予防
スプール交換時のトラブル対処法
作業中に発生しがちなトラブルと、その対処方法を把握しておきましょう。
よくあるトラブル1:スプールが外れない
- 原因:古いグリスの固着、異物の挟まり
- 対処法:CRC等の浸透剤を使用、専門店での点検
よくあるトラブル2:カウンターが作動しない
- 原因:センサー部の汚れ、配線の接触不良
- 対処法:センサー清掃、メーカーサービスへの相談
よくあるトラブル3:巻き上げ時の異音
- 原因:ベアリングの劣化、内部パーツの摩耗
- 対処法:使用中止、専門技術者による点検
よくあるトラブル4:PEラインの巻き癖
- 原因:保管方法の問題、巻き取り時のテンション不足
- 対処法:ライン交換、正しい巻き方での再施工
緊急時の対応
- 安全確保を最優先
- 作業の即座中止
- 専門店または メーカーサービスへの相談
- 無理な修理は絶対に行わない
予防策
- 定期的なメンテナンス実施
- 使用後の清掃習慣
- 適切な保管環境の維持
- 早期の異常察知
まとめ
電動リールのスプール交換は、正しい知識と手順を身につけることで、誰でも安全に行うことができる作業です。最も重要なのは安全確保であり、電源の完全切断と適切な作業環境の準備が成功の鍵となります。
定期的なスプール交換により、電動リールの性能を最大限に活用し、快適な釣りを長く楽しむことができます。初回は慎重に時間をかけて行い、慣れてきたら効率化を図るのが理想的です。
重要なポイントの再確認
- 電源の完全切断は必須
- 適切な道具と環境の準備
- メーカー推奨の手順遵守
- 作業後の動作確認実施
- 困った時は専門店に相談
この記事の内容を参考に、安全で確実なスプール交換を実践し、電動リールライフを充実させてください。