はじめに
船釣りでは波しぶきや雨、突然の大時化により、電動リール用バッテリーが水にさらされる危険性が常にあります。バッテリーが海水で濡れてしまうと、ショートや腐食により釣行が台無しになるだけでなく、高価な電動リールまで故障させてしまう可能性があります。
この記事では、電動リール用バッテリーの防水性能について詳しく解説し、失敗しない選び方と必須の防水対策をご紹介します。適切な防水対策を施すことで、安心して船釣りを楽しめるようになります。
1.電動リール用バッテリーの防水性能の基礎知識

防水性能とは何か?IPコードの見方
防水性能を表す国際規格として「IPコード」があります。IP65やIP67といった表記を目にしたことがあるでしょう。
IPコードの読み方
- IP:International Protection(国際保護等級)
- 1つ目の数字:固形物に対する保護等級(0~6)
- 2つ目の数字:液体に対する保護等級(0~8)
液体保護等級の目安
- IPX4:あらゆる方向からの水の飛沫に対して保護
- IPX5:あらゆる方向からの噴流水に対して保護
- IPX6:あらゆる方向からの強い噴流水に対して保護
- IPX7:一時的な水没に対して保護(水深1m、30分間)
- IPX8:継続的な水没に対して保護
電動リール用バッテリーに必要な防水レベル
船釣りにおいて、電動リール用バッテリーに求められる防水レベルは最低でもIPX4以上です。理想的にはIPX6~IPX7レベルの防水性能があると安心です。
ただし、市販の電動リール用バッテリーの多くは、完全防水ではないため、追加の防水対策が必要になります。
防水と完全防水の違いを理解する
- 防水:一定の条件下で水の侵入を防ぐ
- 完全防水:あらゆる条件下で水の侵入を完全にシャットアウト
多くのバッテリーケースは「防水」であって「完全防水」ではありません。長時間の水没や高圧の水流には耐えられない場合があります。
海水による腐食リスクと防水の重要性
海水は真水と比べて導電性が高く、金属部品の腐食を急速に進行させます。
海水がバッテリーに与える影響
- 端子部分の腐食
- 内部回路のショート
- バッテリー容量の急激な低下
- 電動リール本体への逆流による故障
船釣りでバッテリーが濡れる主な原因
- 波しぶき:船の動きにより海水が飛散
- 雨天時の使用:雨水の直接的な侵入
- 船上での水洗い:魚の血や汚れを洗い流す際
- 結露:温度差による水滴の発生
- 船底への浸水:ビルジ水による底部からの浸水
2.バッテリータイプ別の防水性能比較

リチウムイオンバッテリーの防水仕様
シマノ純正リチウムイオンバッテリー
- 防水等級:IPX6相当
- 特徴:優れた防水性能とコンパクト設計
- 注意点:コネクター部分は防水キャップで保護必須
ダイワ純正リチウムイオンバッテリー
- 防水等級:IPX5~IPX6相当
- 特徴:バッテリー本体の密閉性が高い
- 注意点:ケーブル接続部の防水対策が重要
メリット
- 軽量で持ち運びが楽
- 本体の密閉性が比較的高い
- 自己放電が少ない
デメリット
- 価格が高い
- 水没時の復旧が困難
鉛バッテリーの防水性能と注意点
ディープサイクルバッテリー
- 防水等級:多くがIPX4程度
- 特徴:コストパフォーマンスに優れる
- 注意点:重量があるため転倒リスクが高い
密閉型鉛バッテリー
- 防水等級:IPX5程度
- 特徴:メンテナンスフリー
- 注意点:端子部分の防水対策が特に重要
メリット
- 低コストで大容量
- 多少の水濡れにも比較的強い
- 修復可能な場合が多い
デメリット
- 重量が重い
- 端子部分の腐食が早い
- 完全放電により劣化しやすい
マキタ互換バッテリーの防水対策
工具用として設計されたマキタバッテリーは、基本的に防水性能が低いため、電動リール用として使用する際は十分な防水対策が必要です。
推奨防水対策
- 専用防水ケースの使用
- シリコン系防水コーティング
- 接続部への防水グリス塗布
- 定期的な端子部の清掃・メンテナンス
専用純正バッテリーの防水技術
シマノの防水技術
- 10m耐水圧性能(プレイズシリーズなど)
- 専用防水コネクター
- 内部への海水侵入防止構造
ダイワの防水技術
- MAGMAX MOTORシリーズの防水性能
- 専用密閉ケース
- 防水パッキンによる確実なシール
コードレスバッテリーの防水メリット
コードレスバッテリーは、ケーブル接続が不要なため、防水面で大きなメリットがあります。
主なメリット
- ケーブル接続部からの浸水リスクゼロ
- 取り回しが良く、防水ケースへの収納が容易
- 端子部の露出が最小限
注意点
- 充電端子部の防水対策
- 本体の防水性能確認
- 使用可能電動リールの制限
3.防水ケースと保護対策の選び方

市販の防水ケースおすすめ5選
1. プラノ防水ケース 1612
- 防水等級:IPX7
- 適合バッテリー:中型リチウムイオンバッテリー
- 価格帯:8,000円~10,000円
- 特徴:パッキン交換可能、耐衝撃性抜群
2. ペリカンケース 1150
- 防水等級:IPX8
- 適合バッテリー:大型鉛バッテリーまで対応
- 価格帯:15,000円~20,000円
- 特徴:業務用レベルの防水性能
3. タフボックス BT-12
- 防水等級:IPX6
- 適合バッテリー:12Vバッテリー専用
- 価格帯:5,000円~7,000円
- 特徴:コストパフォーマンス良好
4. シマノ純正バッテリーケース
- 防水等級:IPX6
- 適合バッテリー:シマノ純正バッテリー専用
- 価格帯:12,000円~15,000円
- 特徴:専用設計で確実なフィット
5. ダイワ純正バッテリーボックス
- 防水等級:IPX5
- 適合バッテリー:ダイワ純正バッテリー専用
- 価格帯:10,000円~13,000円
- 特徴:持ち運びやすいハンドル付き
自作防水ケースの作り方と注意点
必要な材料
- プラスチック製工具箱(密閉タイプ)
- ウレタンフォーム
- 防水パッキン
- 防水コネクター
- シリコン系シーラント
作成手順
- ケース側面に防水コネクター用の穴加工
- パッキンの装着と密閉性テスト
- 内部にウレタンフォームでバッテリー固定部作成
- 防水テストの実施
注意点
- 完全防水の保証は困難
- 定期的なパッキン交換が必要
- 市販品と比べて信頼性が劣る場合がある
防水キャップとコネクター保護
防水キャップの重要性
電動リールの電源コネクター部分は、最も水が侵入しやすい箇所です。使用していない時は必ず防水キャップを装着しましょう。
推奨防水キャップ
- シマノ純正防水キャップ
- ダイワ純正防水キャップ
- 汎用防水キャップ(サイズ要確認)
ケーブル接続部の防水対策
防水グリスの使用
接続前に端子部分に防水グリスを薄く塗布することで、防水性能が向上します。
推奨防水グリス
- タイベック防水グリス
- シマノ純正コネクターグリス
- ダイワ純正グリス
塗布方法
- 端子部を清浄にする
- 薄く均一に塗布
- 余分なグリスを拭き取る
- 確実に接続する
バッテリーボックスの密閉性チェック方法
水没テスト
- バッテリーボックスに乾燥剤を入れて密閉
- 1時間程度水に沈める
- 内部に水の侵入がないか確認
- 乾燥剤の変色で湿気侵入もチェック
定期的なメンテナンス
- パッキンの劣化確認(6ヶ月ごと)
- ケース本体のクラック確認
- 蝶番部分の動作確認
4.実釣での防水トラブル回避術

雨天時の電動リール使用時の注意点
事前準備
- バッテリーボックスの密閉性確認
- 防水カバーの準備
- タオルによる水分除去の準備
使用中の注意点
- 定期的な水分拭き取り
- ケーブル接続部への水の直撃回避
- バッテリーボックスの水平設置
船上でのバッテリー設置場所の選び方
理想的な設置場所
- 船底に近い安定した場所:重心が低く転倒しにくい
- 波しぶきが直接当たらない場所:操舵席後方など
- 風通しの良い場所:熱がこもりにくい
- 作業の邪魔にならない場所:釣り動作を阻害しない
避けるべき場所
- 船首部分(波しぶきが多い)
- 直射日光が当たる場所
- エンジン熱が影響する場所
- 人の通り道
海水を被った時の緊急対処法
immediate response(即座の対応)
- 電源を即座に切断:更なる被害を防ぐ
- 真水での洗浄:海水の塩分を除去
- 水分の完全除去:エアブローや拭き取り
- 乾燥剤での乾燥:48時間以上の乾燥
詳細な対処手順
- 電動リールからケーブルを抜く
- バッテリー端子を清浄な布で拭く
- 真水で塩分を洗い流す
- 完全に乾燥させてから通電テスト
防水グリスの正しい使い方
選び方のポイント
- 電気的絶縁性がある製品
- 塩水に対する耐性
- 温度変化に強い
- 長期間効果が持続
使用方法
- 接続部を清浄にする
- グリスを薄く均一に塗布
- 接続して余分なグリスを拭き取る
- 定期的な再塗布(3ヶ月ごと)
長期保管時の防水メンテナンス
保管前の準備
- バッテリーの完全充電
- 端子部の清掃と防水グリス塗布
- 防水ケースの密閉性確認
- 乾燥剤の新品への交換
保管環境
- 温度変化の少ない場所
- 湿度の低い場所
- 直射日光を避ける
- 結露が発生しない場所
定期的なチェック
- 月1回の充電状態確認
- 3ヶ月ごとの防水ケース点検
- 6ヶ月ごとの通電テスト
5.おすすめ防水バッテリー11選【2025年最新】

最高防水性能を誇るプレミアムモデル
1. シマノ 電力丸 15Ah(IPX7相当)
- 容量:15Ah
- 電圧:14.8V
- 防水等級:IPX7相当
- 価格:45,000円~50,000円
- 特徴:シマノ最高峰の防水性能
2. ダイワ タフバッテリー 20Ah(IPX6相当)
- 容量:20Ah
- 電圧:14.4V
- 防水等級:IPX6相当
- 価格:40,000円~45,000円
- 特徴:大容量と防水性を両立
コスパ重視の防水バッテリー3選
3. POVNASリチウムバッテリー 12Ah
- 容量:12Ah
- 電圧:12V
- 防水等級:IPX5相当
- 価格:15,000円~20,000円
- 特徴:コストパフォーマンス抜群
4. ヘマジュン 12V 18Ah
- 容量:18Ah
- 電圧:12V
- 防水等級:IPX4相当
- 価格:12,000円~15,000円
- 特徴:大容量で価格が安い
5. K-ZAN 携帯バッテリー 10Ah
- 容量:10Ah
- 電圧:12V
- 防水等級:IPX4相当
- 価格:10,000円~12,000円
- 特徴:軽量コンパクト設計
軽量コンパクトな防水バッテリー
6. シマノ 探見丸バッテリー 6Ah
- 容量:6Ah
- 電圧:14.8V
- 防水等級:IPX6相当
- 価格:25,000円~30,000円
- 特徴:ライトゲーム用に最適
7. ダイワ コンパクトバッテリー 8Ah
- 容量:8Ah
- 電圧:14.4V
- 防水等級:IPX5相当
- 価格:22,000円~27,000円
- 特徴:持ち運びやすさ重視
大容量で防水性能も優秀なモデル
8. マリンバッテリー ディープサイクル 28Ah
- 容量:28Ah
- 電圧:12V
- 防水等級:IPX5相当
- 価格:18,000円~22,000円
- 特徴:長時間の釣行に対応
9. パナソニック密閉型バッテリー 24Ah
- 容量:24Ah
- 電圧:12V
- 防水等級:IPX4相当
- 価格:16,000円~20,000円
- 特徴:信頼性の高い国産品
初心者におすすめの防水バッテリー
10. フィッシング用バッテリーセット 14Ah
- 容量:14Ah
- 電圧:12V
- 防水等級:IPX4相当
- 価格:13,000円~16,000円
- 特徴:ケーブル・充電器付きのセット商品
11. エントリーモデル 12V 16Ah
- 容量:16Ah
- 電圧:12V
- 防水等級:IPX4相当
- 価格:11,000円~14,000円
- 特徴:初心者に優しい価格設定
まとめ
電動リール用バッテリーの防水対策は、安心・安全な船釣りを楽しむために欠かせない要素です。
重要なポイント
- 防水等級IPX4以上のバッテリーまたは防水ケースを選ぶ
- 接続部の防水対策を確実に行う
- 定期的なメンテナンスで性能を維持する
- 緊急時の対処法を事前に確認しておく
適切な防水対策を施すことで、悪天候時でも安心して電動リールを使用できます。特に海水による腐食は深刻な損害をもたらすため、予防対策を怠らないようにしましょう。
初心者の方は、まず確実な防水性能を持つ純正バッテリーと防水ケースのセットから始めることをおすすめします。経験を積むにつれて、自分の釣りスタイルに合った防水対策を見つけていけるでしょう。